とかく「めまい」や「ふらつき」の辛さは、他人に理解してもらいにくいものです。
めまいの症状はおおまかに、周囲が回っているような感じになる「回転性めまい」。また、突発的（一時的）か持続的かなどです。
ヒトは平衡感覚や空間に対する体の位置を保持するために、さまざまな器官が密接にかかわっています。
頭の位置や体勢の情報が脳に伝わり総合的に認識されて平衡感覚が保たれます。
乗り物酔いをしやすい人が「三半規管が弱い」と言ったりします。これは言い換えると「平衡感覚の調整・保持が弱い」といったところでしょう。三半規管は耳の奥にあり、上下・前後・左右の動きを感知する働きを担っています。
筋肉や関節は骨格を動かすためはもちろん、特に体幹（特に首～腰）や臀部(おしり)や下肢などが、重力や傾きなどに対して姿勢を保持するために、どの筋肉を緊張（または弛緩）させ、関節を曲げる（または伸ばす）かの情報を脳に伝えてバランス調整をしています。
また、視覚情報もかかわります。目を閉じて足をそろえた状態で直立姿勢を保てるかチェックする「ロンベルグ試験」というものがありますが、目を開けていれば姿勢を保てても、目を閉じるとバランスを崩して倒れてしまうと「陽性」の判断になります。ふらつくけれども倒れなければ「陰性」です。
ロンベルグ試験の詳細については、ここでは端折りますが、人間が姿勢を保つために様々な感覚情報が複雑に関係します。その中でも特に固有感覚と視覚が重要と考えられています。
固有感覚とは筋肉を緊張させたり弛緩させたり、関節の曲げ伸ばしの動きにかかわります。目を閉じていても筋肉や関節の動きを感じとれる感覚（深部感覚）をさします。
平衡機能に障害が起こると回転性のめまいを引き起こしやすくなります。「良性発作性頭位めまい症」はそのひとつで、頭位性めまいとも呼ばれます。この型のめまいの多くは、朝の起床時に起こりやすいことが特徴ともいわれています。
回転性めまいと同時に耳が聞こえにくくなるものにメニエール病があります。三半規管にくわえ、聴覚器官にも影響を及ぼすため耳が聞こえにくくなることもあります。
メニエール病に似た症状に「突発性難聴」があります。見分け方のひとつにメニエール病のめまいに比較して、難聴の場合は一次的なもので、めまいを自覚しない人もいます。また、めまいを生じる難聴は重度の場合があるともいわれます。
筆者も20年以上前に突発性難聴になりましたが、めまいの症状はありませんでした。どんな疾患でもそうですが、臨床でみられる症状は必ずしも論文通りとは限らないことが多々あります。病院へ行くぐらいに耳の聞こえの悪さを自覚したころは、かなり時間が経過していたのかもしれません。
めまいは病気としての異常を指摘しにくい病気でもあり、原因をつきとめにくいものとされ、病院で診察を受けるにしても耳鼻科、循環器内科、脳神経外科、心療内科・・・その他、さまざまな科にかかわる疾患で生じることがあります。
私の母もめまい（ふらつき）に悩まされている一人ですが、都内の大学病院で４つの科（循環器内科、脳神経外科、リウマチ科、耳鼻科）を受診し、ありとあらゆる検査を受けたが結果は「病名・原因ともに不明」でした。
最新の医学、医療・検査機器をもってしても原因をつきとめる事が出来なかったのです。
特に健康状態を検査数値ではかる現代医学において、検査結果に異常を示さないと医師も率直に「困りましたね」「分からないですね」「様子をみましょう」で終わらせてしまうことがあります。めまいやふらつきは、それほど患者さんの痛み（苦しみの意）を共有しづらい症状といえるのではないでしょうか。
ざっくりとですが、原因を推察する方法のひとつに「立ちくらみ」の症状の有無があります。
また、徐脈・頻脈・不整脈などで血液の心拍出量が低下し、脳への血流減少が招くめまいや意識消失（失神）や痙攣など、一過性の脳虚血症状を引きおこす病態（アダムス・ストークス症候群）では心臓が原因になることも考えられます。
いずれにしても、まずは医師に相談することをおすすめします。
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＊リライト：2020年9月13日