マッサージ師、あん摩指圧師の手の親指には、”甘い”と”苦い(または辛い)”と呼ばれるものがあります。
親指を伸ばした時に、親指の先が爪側に反るのを「甘指(あまゆび)」、反らない指が「苦指(にがゆび)」または「辛指(からゆび)」などと言われることがあります。
これは手の親指の反り具合をさす隠語のようなものですが、マッサージ師、あん摩指圧師の中には「初耳」という人もいます。
とはいえ、筆者が独自にそう呼んでいるというわけでもありません。
筆者自身、日本国内ではマッサージの先生から教わり、また研修で訪れた中国の上海中医薬大学でも推拿の先生から教わりました。
甘指と苦指(または辛指)では、マッサージや指圧をする際に何が違うのかというと患者さんが受ける圧のかかり方の感覚にあります。
どちらかといえば甘指を好む患者さんが多いと言われています。なぜなら、指先が爪側に反ると指の腹の部分で接触する面積が広くなるので、やわらかい指腹部によるマイルドな圧のかかり方を感じます。
反らない苦指または辛指の場合、指先の硬い部分に圧がかかりやすくなるため、患者さんに刺さるような圧感覚になってしまいがちです。
「反る角度が何度以上」といったような定義があるわけではありません。あくまでも指を伸ばした時に反るか反らないかといった見た目の印象にすぎません。
少数派ですが、苦指・辛指ならではの「鋭く刺さるような圧感覚」を好む患者さんもいます。
苦指・辛指は、甘指にはないピンポイントの強い刺激をあたえることができます。これは、甘指では味わえない感覚ではないでしょうか。
「苦指・辛指は指鍼(ゆびばり・ししん)に向いてる」と言う人もいます。
指鍼とは、指を鍼に見立てて圧をかけるものとされているものです。
筆者も指鍼の定義や理論学ぼうとした時期があり、指鍼を独自に調べたり、指鍼を得意とする施術所で実際に施術を受けて指鍼について話しをうかがったりもしたが、今日までに「これぞ指鍼」と納得できる指導や文献に巡り合えていません。
治療というよりもリラクゼーションに重点を置いた施術を希望するなら甘指がおすすめです。鍼のように局所的にしっかりと深部に届くような刺激による治療効果をもとめるならば苦指・辛指がおすすめです。
とかくリラクゼーションでは「強(つよ)押し希望」といったリクエストをするお客さんがいますが、「甘・苦」といった指の特徴でリクエストしてみるのも面白いかもしれません。
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*リライト:2020年1月18日
*画像追加:2020年8月27日