下肢神経痛や下肢の違和感の要因は数多くある。その中でも腰痛をともなったり坐骨神経痛症状を訴える人が多い。マッサージや鍼の患者さんに多い症候や疾患は比較的限られている。
坐骨神経痛の起因疾患になるものに、椎間板ヘルニアが知られている。椎間板ヘルニアは、髄核が脊柱管内や椎間孔内の神経根を圧迫して発症する。
椎間板ヘルニアの好発部位は第四腰椎と第五腰椎、第5腰椎と第一仙椎である。発症年齢は中高齢のイメージがあるものの、実は20~40歳代が多い。
代表的な検査にはSLR、ATR、足背部の知覚検査などがある。特にSLRの陽性反応率は高い。
SLRとは、仰向けの患者さんの片足の膝を曲げずに伸展した状態で、術者が股関節を支点にして上に上げていき、臀部から下肢にかけてのシビレや放散痛を確認する検査である。
脊柱管狭窄症では、下肢神経痛とともに間欠歩行が認められる。間欠歩行とは歩行を始めて数十メートルから数百メートルで痛みやシビレなどの違和感が生じて、歩行を続けるのが辛い状態になるものの、立ち止まって前屈をすると痛みなどが消失する症状だ。
なお間欠跛行には動脈(血管)性と馬尾神経性に大別され、動脈(血管)性を推察するうえで大切なのは、鼠径部を走る大腿動脈の拍動の左右差である。一般に痛みやシビレの症状があらわれる側の拍動が弱くなる。
梨状筋が座骨神経痛症状を誘発することもある。推察する痛みの誘因としては股関節の外転動作がある。また、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などの坐骨神経症状を除外された際に疑いの目を向ける。
脊椎すべり症も坐骨神経痛症状がみられ、下肢神経痛の症状もみられることがある。階段変形が特徴的ではあるが、脊椎の凹凸や前・後弯の程度は個人差が大きく、画像検査ができないマッサージ師、鍼師、きゅう師は、それだけで安易に脊椎すべり症と推察するのはよくない。
腰痛、座骨神経痛、下肢痛は誘発原因が関連痛なのか直接的なのか心理社会的かなど、その原因がどこにあるか見極めるのが難しい。しかも、器質的な疾患を確認できたとしても、その治療が痛みの緩解につながらない
その他に、中高年層に多くみられるものとして変形性脊椎症がある。起床時に痛みがでたり、同じ姿勢をとった状態から動き出した時に生じる痛みが特徴的である。ただし、間欠跛行が無かったり、SLRによる検査で陰性など、推察はしやすいとされている。
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