マッサージや鍼で、電気を用いる治療方法には高周波、低周波、超音波、ラジオ波、干渉波、赤外線の他、色々な物理機器があります。最近では電気量販店でも多くの種類の家庭用治療器を目にするようになりました。
その中でも、特にマッサージや鍼の治療でよく用いられる低周波治療器(通称「パルス」)で期待できる主な効果には筋緊張緩和、疼痛緩和などがあると考えられています。(疼痛緩和の機序に血行促進や痛覚閾値を高めるといったものがあると考えられています)。
電気は鍼または専用の粘着パッドを介する方法があります。パッド用いる方法はTENS「経皮的電気神経刺激」、鍼を使って筋肉や神経を刺激することを「低周波鍼通電」などと呼ばれることがあります。
パルスを積極的に用いるマッサージ師、鍼師は決して多くはありません。理由のひとつに知識不足があるのではないかと筆者は考えます。症状や部位によって「経皮または鍼」「周波数」「電流」などを使い分けることで効果的な治療が期待できると考えられています。
それでも、エビデンス(治療効果の科学的根拠)が少ないということから、電気治療を否定的に考えるマッサージ師や鍼師もいます。しかし、医師らによる現代医療にもエビデンスが明確でない治療法や物理機器が用いられていることがあることはあまり知られていません。
また、特に深層の筋肉や神経の近くを目標にする鍼通電では、解剖学的な知識が乏しいと、期待する治療効果が得られないどころか、患者さんに不快な思いをさせてしまうことすらあります。そういったメリットやデメリットを含めた知識やインフォームドコンセントすらままならない術者が少なくないのも実情かもしれません。
電気療法の治療効果については、疾患や症状によってさまざまな見解があります。また、体内に医療機器を用いている人(ペースメーカーなど)、妊娠中の人、循環器系に大きな疾患がある人、悪性腫瘍の治療中患者などで電気治療の「禁忌」や、それこそエビデンスの観点から副作用のリスクが高いと考えられていることから、電気療法が推奨されていないこともあります。
患者さんと治療家の相互理解のもと、マッサージや鍼の手技にこだわらず、上手に電気治療を用いることで、より効率的で効果的な治療を期待できるものと筆者は考えています。
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*リライト:2020年4月2日・21日