肩こりの原因、肩甲骨の動きをチェック

 肩こりを訴える人には、首や肩甲骨まわりにも痛みや違和感を抱いている人が多いです。

 

 首や腕の運動には肩関節でも特に肩甲胸郭関節に作用する筋肉の働きを伴っているためです。裏を返して言えば、肩甲骨がちゃんと動かないと首や腕の動きにかかわる筋肉にも影響を及ぼしかねないのです。

 

 肩甲骨の動きには挙上、下制、上方回旋、下方回旋、外転、内転があり、意外に複雑です。各々の作用に関わる代表的な筋肉には・・・

 

 挙上にかかわる筋肉は肩甲挙筋、僧帽筋上部線維、大・小菱形筋

 

 上方回旋にかかわるのは前鋸筋下部線維、僧帽筋上部線維


 外転にかかわるのは前鋸筋、小胸筋、僧帽筋上部線維


 下制にかかわるのは小胸筋、僧帽筋下部線維
 下方回旋にかかわるのは小胸筋、僧帽筋下部線維、大・小菱形筋


 内転にかかわるのは僧帽筋中部線維、大・小菱形筋

 

 鍼灸やマッサージで治療をする際には、どういう姿勢や動きで痛みが生じるか、または痛まないかを確認することが大切です。肩コリだからといって、やみくもに痛む場所を鍼やマッサージで刺激をあたえると症状を悪化させることもあります。

 

 肩こりを訴える人の多くにみられる動作は、挙上による痛みです。すなわち肩甲挙筋、僧帽筋上部線維、大・小菱形筋に何かしらの原因があるのではないかと推察します。それと同時に確認すべき最低限の動作としては肩の外転と下方回旋です。

 

 肩の外転動作は肩甲骨の上方回旋が作用します。すなわち、肩甲骨の上方回旋で違和感を生じるようであれば、僧帽筋上部線維または前鋸筋下部線維にも疑いの目が向けられることになります。

 

 下方回旋は肩甲骨の挙上や上方回旋とは逆の動きになります。作用が拮抗関係にある筋肉を確認することにより、主動作筋肉に原因か拮抗動作をする筋肉に原因があるかを推察できます。同じ痛みでも筋肉の収縮による痛みなのか伸長による痛みなのかによって、治療対象部位が異なってきます。すなわち下方回旋で痛む場合には小胸筋、僧帽筋下部線維にも疑いの目が向けられます。

 

 再確認として、挙上でどこか痛むかを触診しながら確認します。患者さん自身の指で指し示させられるようであれば、そうしてもらうのが間違いありません。これによって、最初の治療方針としての対象部位を主動作筋(ここでは挙上にかかわる筋肉)にするか、拮抗筋にするかを選定できるのです。

 

 肩甲骨の外転時に鎖骨につっぱり感を確認して自覚症状がみられるようであれば、最初にゆるめた方がいい筋肉は僧帽筋ではなくて、小胸筋の場合もあるのです。

 

 そして、小胸筋の付着部である烏口突起周辺に圧をかけながら挙上動作をしてもらい、違和感や痛みが和らぐようであれば、迷わずに小胸筋を対象にした治療を試してみるのです。

 

 このように、肩こりの症状といえども、いくつかの確認をすることによって想定外の治療対象部位が浮上することもあるのです。

 

 筋肉や神経走行を踏まえたうえでの原因追及は、肩こりを含む肩まわりの愁訴がもっとも治療効果の良し悪しが如実に現れるかもしれません。

 

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