膝の痛み・・・前後内外奥

 膝関節は歩行時には体重の約2~3 倍、階段の上り下りで体重の約4~6倍の負荷がかかるという報告があります。膝関節を構成する骨は大腿骨、脛骨、膝蓋骨です。骨をつなぐのに靭帯があり、衝撃をやわらげたり動きを滑らかにする軟骨や半月板があります。

 

 人体の関節で構造的に特に複雑といえるでしょう。そのため、膝の痛む位置によって原因が異なるケースが多いのも特徴のひとつです。

     

 膝の前部が痛む原因としてあげられるのは、ランナー膝とよばれる症状が代表的です。これは、腸脛靭帯炎と呼ばれるもので、とくに膝の前から外側やや上方周辺に痛みが生じやすいです。

 

 大腿四頭筋(太ももの表側の筋群)を酷使したり弱いと生じやすいとされています。また、ハムストリング(太ももの裏の筋群)が柔軟性を欠いていたり緊張した状態であったり、アキレス腱が硬いなどでも生じます。さらに、回内(足が内側に傾いている)した状態での歩行が原因になることもあります。

     

 膝の内側が痛むことでよく聞くのに鵞足炎(がそくえん)があります。太ももの前面から内側にかけて走行し、股関節や膝関節の運動に作用する3つの筋肉(縫工筋、半腱様筋、薄筋)が脛骨に付着する部分です。ランニングやキックする動作や瞬発的に大きな負荷がかかるターンダッシュなどで生じやすいです。また、体重増が原因になる場合もあります。

 

 膝の外側が痛む場合は筋肉系が原因になることが多いと言われています。膝関節の動きに大きく影響するのは大腿四頭筋です。大腿四頭筋は膝関節を伸ばす筋肉で、これがしっかりしていなければ膝蓋骨の安定性や動きに影響を及ぼします。膝蓋骨が安定しないと側方への動きが大きくなり、痛みの原因になります。

 

 膝の裏側が痛む場合は、表面的か深部的かにもよりますが、人によって表現方法が異なるのも特徴です。表の奥は裏になり、裏の奥は前になるわけで、伝える方も表現に困る場合があります。特に中高年で表面的に見るからに腫れている場合で、痛みというよりも違和感を感じる場合には、ベーカー嚢腫が疑われます。これは、膝の後ろ側にある膝関節の滑液包の炎症で、関節液が関節腔から滑液包に流れ込んで溜まることで生じる腫瘤です。その他には靭帯、半月板、軟骨が原因になっていることもあります。

 

 関節の痛みや違和感は、鍼治療が効果的とされている症状の一つで膝関節も他ではありません。とはいえ、関節リウマチなど根本原因が他にある可能性が高いので、まずは医師の診断を受けるべきでしょう。原因が特定されれば、鍼灸やマッサージ治療によって痛みの緩和や症状進行の抑制などで効果が期待できるとされています。

 

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