東洋医学でいう「肝」とは、人体の臓器でいう「肝臓」とは違うのですが、ここでは説明を端折りまして「『肝』という人体に備わった働き」とでも捉えていただければと思います。
肝は「血を臓す」「疏泄作用」「魂を蔵す」といった働きをもち、目や筋や爪や子宮などを「支配」しています。支配とは「健康状態を反映する」とでもとらえていただければいいでしょう。
すなわち、たとえば目が乾いて痒かったり、筋痛があったりすると「肝の症状を疑う」といった判断材料のひとつになります。
東洋医学でいう生命の根本は気血精というものにあります。そして肝には「肝の気」というものがあり、これが機能しないと肝そのものが適切な働きをしません。
東洋医学では女性に多い症状には血にまつわるものが多いと考えられています。現代医学的に考えても「手足の冷え」「めまい、ふらつき」「貧血」などは女性に多くみられると考えられていて、まさに東洋医学的に血が大きくかかわる症状とされているのです。
貧血は科学的に原因や病理が解明されているものがありますが、手足の冷えやめまい、ふらつきについては完全に解明されていないとされています(二次的に生じるものであれば原因が分かるものもあります)。
その他のも血が少なくなると、東洋医学的には腰痛、月経痛、食欲減退、のぼせの症状があらわれやすいと考えられています。
また、体内には血とともに「津液」という液状のものが存在します。津液は「津」と「液」に分けられますが、この説明も端折ります。汗、涙、関節液、涎、鼻水なども津液のひとつに含まれると考えてもらえればよいでしょう。
血が全身をめぐって肌肉を潤したり、熱を冷ますといった作用をするうえで、血中に含まれる津液の存在が必要です。そのため、津液が不足すると潤す作用が低減して乾燥や熱をともなう症状を生じさせます。
また、脳血管障害、顔面神経麻痺、坐骨神経痛といった各種の神経障害、五十肩、高血圧。また、のぼせや口の渇き、目や肌のかさつきといった症状もあらわれます(部分的な熱症状は、概ね「虚熱」などとも呼ばれます)。
さらに、熱症状が進み、肝と関係が深い「胆」に波及すると頭痛、肩こり、イライラ、めまい、不眠といった症状を訴えることがあります。そして、それらの熱はすうっと引いたりすることもあるのが特徴で「寒熱往来」といった表現もされます。
肝の症状での対策としては「水分と栄養の補給」が第一になります。ちなみに、東洋医学の「五行色体」というものを参考にすると、肝を補うのに良い飲食物や味として「鶏肉」「すもも」「韮(にら)」「麦」「酸味」などがありますが現代の医学的あるいは栄養学的な根拠は不明です。
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