辛い痛みは、一刻も早く取り去りたいものです。かつては「痛みは危険信号だから取り去るのは良くない」などと言う有識者もいましたが、どうやら最近の考えはそうとは限らないようです。
ぶつけたり、切ったり、ひねったりといった外傷などにより、痛みを生じさせる物質によって感じる痛みを侵害受容性疼痛と呼ぶことがあります。
また、慢性的に痛むものの中には、神経障害性疼痛というものがあります。その他にも微細な毛細血管が増加したり気候変化(主に気圧や気温の変化)、心理社会的要因などさまざまな痛みの原因にまつわる研究報告があります。
筆者ら鍼灸師やマッサージ師はレントゲンなどの画像検査や血液検査ができません。そのため、重篤な疾患が潜んでいる可能性を見抜くのは難しく、治療方針を立てるためには患者さんからの「情報」が肝要になってきます。
その中でも筆者が特に重視している情報を2つあげるとしたら、「タイミング」と「痛み方」です。
タイミングとは「動作と時間帯」です。動かさなくても痛む場合は、内臓の障害による関連痛の可能性も考えられるため、病院で検査を受けることをすすめすることがあります。また、寝起きや夕方といったまさに時間帯ですが、寝起きの場合には血液や間質液や滑液などのめぐりの不調、夕方の場合には疲労などが考えられます。
痛みの表現は「チクチク」「ジンジン」「ズキズキ」「ピリピリ」「うずくよう」「刺すよう」などさまざまでです。「表現しようのない痛さ」という言い方をする患者さんもいます。
明らかな外傷や炎症を確認できれば、あえて擬音を使ってまで表現をしてもらわなくても良いのですが、外見的には損傷が確認できない慢性的な痛みの場合には、痛み方の表現は治療方針を立てるうえで大切な情報になります。その中でも「チクチク」「ピリピリ」「ジンジン」は神経そのものが障害を受けている可能性が推察されます。
こういった慢性的な痛みの場合には、いわゆる危険信号の役割りとは異なるので、QOL(生活の質)を阻害している可能性が推察されます。
とはいえ、慢性的な痛みであっても、薬や湿布などの消炎鎮痛剤などを使ったり、マッサージを受けて一時的に痛みを和らげることが根本治療に結びつかないのはどういう状態かというと、安静にしていても痛むケースです。
こういった場合、上述した内臓に異変が生じていたり、関節部などに器質的な障害の疑いも考えられるため、医師に相談することをお勧めします。たとえば首から肩にかけての痛みでしたら、まずは整形外科を受診し、画像検査などで異常が見当たらないということであれば、内科など別の科を受診することをおすすめしています。
心因性による痛みについての研究報告もあります。これは神経というよりも脳の作用や生活環境といった心理社会的要因などが考えられているものです。
現代医療でさえ、どの学科で見てもらうかによって見立てが変わるものです。そして、本人に合う治療法との巡りあわせというものがあったりもします。慢性痛はあきらめずに、取り去る努力が必要だと筆者は考えています。
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*リライト:2020年4月25日