「股関節が痛む」といっても、患者さんが指し示す部位や訴える症状はさまざまです。
解剖学的には・・・といった解説は、ここでは省略しますが、画像検査が出来ず問診と触診・徒手検査程度で治療方針を立てる鍼灸師、マッサージ師にとっては、治療部位を特定するのは決して容易ではありません。
腸骨稜の高さの左右差、片足立ち、下肢の長さの左右差などは一般的によく行われるチェックです。
腸骨稜の触診では股関節の運動に作用する筋肉群のチェックになります。腸骨稜の触診については以前にもブログで書きましたが、腸骨筋、外腹斜筋、大腿筋膜張筋、縫工筋(上前腸骨棘)が付着しています。
下前腸骨棘には大腿直筋が付着しています。その他、腸骨大腿靭帯や恥骨大腿靭帯なども大腿骨に付着して股関節の運動に作用してます。
仰向けで膝を伸ばした状態で股関節を屈曲していき、可動域いっぱいのところで膝を曲げます。すると、股関節はさらに曲がるとともに痛みが生じると、腰椎の不具合を疑います。
また、膝を曲げても股関節の動きに変わりがなければ仙腸関節または臀部の不具合を疑います。すなわち、股関節に違和感を抱いても、別の部位の不具合を疑う一例になります。
引き続き仰向けの状態での検査法には、片側の膝を腕で抱えるものがよく知られています。チェックする部分は、抱えない側の股関節や下腿の動きで、浮き上がるような動きがみられれば、股関節の不具合を推察します。
太ももの筋肉が緊張していれば股関節の動きに作用する筋肉の拘縮などを推察します。太ももの筋肉が緊張していなければ、関節包などの構造的な問題が推察されます。
股関節の外転に作用する大腿筋膜張筋や腸脛靭帯が原因の場合もあります。このチェック法は、横向きに寝た姿勢で股関節と膝関節を伸ばした状態で他動的に下肢を上にあげて手を離します。この時に、足がスムーズに下りないようであれば、それらの筋肉の拘縮が疑われます。
臀部にも違和感を感じる場合には、梨状筋の拘縮を確認することもあります。
股関節痛とはいえ、鼠径部を指さす患者さんもいます。鼠径部痛ではグロインペイン症候群というものが知られています。スポーツによるオーバーワーク、股関節や骨盤にかかわる筋肉などの筋力低下、筋拘縮などが原因と考えられています。
鼠径部痛、股関節の違和感や可動域制限、下腹部痛、内転筋付着部、恥骨部痛といった症状が現れるといわれています。
このように、股関節痛といっても原因はさまざまなので、治療を受ける際には特に痛みを感じる時間帯や動作を自分自身で認識しておくと、より効果的な治療を期待できることもあります。
【関連記事】
・頭皮鍼