筆者自身のことですが、最近右の首から肩甲骨内側にかけて「ビリッ!」とした痛みが走る症状があらわれました。
4年ほど前、整形外科の画像検査でC5-6(第5・6頸椎)間にヘルニアとC5に骨棘が確認されたましたが、その時の症状とは明らかに違うし、顕著な神経症状はなかったため、久しぶりに自分で自分自身を治療をしました。
痛みが和らぎ、あらためて鍼の効果を実感しました。
自分自身に鍼をする鍼師は少なくありません。治療目的以外にも、新たな技術(術式)の習得や自分自身を実験台にした効果検証を目的にする場合もあります。
ですから、自分自身に体調不良が生じると「よしっ! リアルに患者さんの気持ちなって治療効果を試せる」と、筆者のように喜ぶ鍼師もいます。症状によって、痛み方や治療対象部位が異なるものなので、教科書通りにはいかない事が多々あるだけに、実体験は治療にリアルにフィードバックさせられる絶好の機会でもあるのです。
筆者ら鍼灸師は、患者さんから「1回の施術効果」が求められると思います。たとえば整形外科の場合だと「レントゲンを撮りましたが異常は見当たりません。〇〇(症状や疾患名)かもしれません。とりあえずお薬を処方しておきますので、しばらく様子をみましょう」とか「多分〇〇だと思われるので、しばらくリハビリを受けてみて下さい」で許されがちですが、鍼灸やマッサージの場合、施術が終わった後に「痛みはあまり変わりませんかあ・・・しばらくこれで様子をみましょう」だと、患者さんとしては「???」となってしまうのではないでしょうか。その患者さんは二度と来ないかもしれません。(保険が効かない自費診療だと、患者さんとしてはなおさら納得できない気持ちになるだろうことは分からなくもありませんが・・・)
接骨(柔道整復師)やリハビリ(理学療法士)などは、テーピングやシーネなどで固定をすることで運動制限をしたり、定期的に通って機能訓練をすることが仕事の中核になるため、「徐々に回復に向かう」が前提になっているケースが多いことから、やはり鍼師のように「一回の施術で痛みを和らげる」までは求められなかったりするものです。また、保険が使えると、安価で施術を受けられるので、少々効果があらわれなくても「やむを得ない」と感じている患者さんも実際にいます。
鍼による鎮痛にはオピオイド鎮痛、下降性疼痛抑制、アデノシン鎮痛、広汎性侵害抑制、ゲートコントロール理論、軸索反射(神経炎症)などによる効果が考えられています。
鍼治療は部位や症状や体質など複合的に勘案し、個々にあった処置が大切だと思います。