「ナゼそこ?」東洋医学の不思議

 「痛む場所と違う場所を治療する施術者がいますが、あれって効くんですか?」

 

 当院の患者さんから、こんな質問を受けたことがあります。

 

 この患者さんに限らず、古典的・伝統的な東洋医学に重きをおく術者の施術を受けた人の中には「頭痛の治療をお願いしたのに、手や足に鍼をされた」「肩こりを治して欲しいのに、手の指をマッサージされた」「お腹や背中をベタベタ触られた」という人もいることでしょう。

 

 治療効果については患者さんの自覚なので何ともいえません。ただそれは西洋医学(現代医療)でも同じことがいえ、病院や医師によって検査方法や術式が違うというのは珍しいことではありません。

 

 まして鍼師やマッサージ師は医師ではないので、治療に必要な情報は患者さんの予診票や問診に加え「見る・聞く・触る」から得ることになります。これを東洋医学では四診(望聞問切)と呼びます。

 

 患者さんの主訴に加え、その根本原因を推察し、治療方針を立てて治療を行う。この一連に不可欠なのが「弁証」というものになります。

 

 その方法には「気血津液」「衛気営血」「陰陽」「三焦」「寒熱」「虚実」「六淫」「六経」「八網」「臓腑」・・・などさまざまです。

 

 四診で患者さんの体に触れる診察の「切」は、手や頭や足などの脈に触れる「脈診」、お腹に触れる「腹診」、背中に触れる「背候診」が代表的です。

 

 例えば腰痛の場合、「重労働」「運動不足」「ストレス」などさまざまな原因が考えられます。

 

 腰痛が腰部にある筋肉の痛みだとしても、そもそもどうしてそうなったかの根本原因を治療することはを「本治」と呼びます。

 

 いわゆる筋肉痛であれば「経筋」として考えたり、筋を主るという観点で「臓腑」で考えて肝(臓器の肝臓ではありません)を治療対象としてとらえる場合もあります。

 

 いずれにしても、腰痛で治療対象部位が足や頭であっても、同業者的には不思議ではないのですが、患者さんは疑問に思われるでしょう。

 

 ですから、患者さんには施術前後の説明が不可欠です。説明が足りないと思わぬ誤解やトラブルが生じかねませんしね。

 

 一方で、鍼師やマッサージ師でも、現代医学(西洋医学)的な治療方針を軸にする施術者は、こういった「弁証」や「経穴」で考えない傾向があります。

 

 ちなみに筆者の場合、まずは西洋医学的(解剖学、生理学などの現代医療的)なアプローチをします。

 

 既往歴、神経症状、打撲、運動、労働といった明確なきっかけが思い当たらなかったり、原因が推察しにくいようであれば日常生活や生活習慣など、さらにお話しを聞かせていただき、それでも原因がつきとめにくい場合には別の原因(内臓、精神的など)にも目を向けた診察を行います。

 

 ここまでやっても、原因の推察が難しいと判断した場合には、全身調整に主眼をおいた東洋医学的なアプローチ(診察と治療)を試みる場合があります。

 

 ちなみに、東洋医学的な治療が合うという患者さんは少なくありません。

 

 原因が思いあたらず、慢性的な不調に悩まされている方は東洋医学の伝統医療的な施術を試してみてはいかがでしょうか。